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20日 2018年 10月

激しい寝言は危険信号?

寝ているときに寝言を言ったり、寝ぼけるなどといったことは誰でもあると思います。

寝言などは傍から聞いていて面白いこともありますが、

そうはいっていられない危険なものもあります。

バラエティー番組では、睡眠中の寝相の悪さや寝ぼけ、寝言がひどいなどといって、

その現場を定点カメラで撮影し、見た人達がそれを笑うといった内容を見かけます。

しかし、脳神経外科医の目線から見ると、

中には笑ってはいられないケースも見受けられます。

大きな声で怒鳴り散らしたり、まるで話しているかのように

長い文章をはっきりとしゃべる寝言や、殴る蹴るなどといった暴力、

起き上がって歩いたり走ったり等といった寝ぼけ方をしていたら、

それはレム睡眠行動障害という重大な睡眠障害である可能性があります。

この睡眠障害を患うと、夢で見ている内容と連動して体が動いてしまいます。

もし悪い夢を見ていて何かに襲われていたり追い払おうとしている場合、

家族やその他そばにいる人が殴る蹴るなどで怪我をさせられたり、

近くにある家具に手足や体をぶつけて本人が負傷してしまうことがあります。

睡眠障害であることを知らない場合、その人と別の部屋で寝たり

寝室の環境を整えればいいと思うかもしれませんが、この状態を放置していると、

認知症やパーキンソン病に発展してしまうリスクがあります。

アメリカのミネソタ大学の調査によると、

レム睡眠行動障害と診断された患者さんの4割弱が、

その症状が出てから約12~17年後にパーキンソン病になったという報告がなされています。

パーキンソン病とは、手足が震えたりバランスが取りにくくなるなどの運動障害のことです。

今の医学では、レム睡眠行動障害についてはっきりとした原因はわかっていませんし、

治療したからといってパーキンソン病や認知症を

完全に予防できるかは分からない部分も多いのが実情です。

しかし、何もしなければ病状は進行しますし、

本人やその家族が負傷する可能性を考えれば、

生活習慣の指導や投薬治療で症状を改善する方が望ましいと考えています。

何よりも、認知症の危険信号に気づくには周囲が気付いてあげられるかどうかが大事です。

寝言や寝ぼけている時の行動等は些細なことのように思えるかもしれませんが、

その些細なことにこそ重要なサインが隠れています。

こうした事実を踏まえて、周囲の方々は小さな変化であっても気づいてあげてほしいと思います。

そうすれば、初期の認知症なら治療で改善できる余地が生まれるのですから。

09日 2018年 10月

神戸市の認知症被害給付金制度をご存じですか?

世界的にみても日本は超高齢化社会への道を突き進んでおり、

高齢者人口は年々増加傾向にあります。

それに伴って認知症患者も増加しており、そういった方々が

事故にあわれるという悲しいニュースを目にすることも増えたように思います。

認知症の方が、ご家族が目を離した隙に外出し、

列車などの公共機関と事故を起こしてしまうことにより、

損害賠償請求されてしまうケースがあります。

これは故意にしたことではないですし、

家族を失ってしまった遺族に損害賠償を背負わせるのは酷なことだと思います。

そんな中で神戸市が、認知症の方が起こした事故に対して

損害賠償を求められた場合に、個人賠償責任保険で最大2億円、

市民が被害に合った場合最大3000万円の給付金支給による、

救済制度の概要案を発表しました。個人賠償責任保険とは、

請求された損害賠償を代わりに保障してくれたり、

万一裁判となったときには訴訟などの費用も保証してくれる制度です。

この給付金制度による賠償責任保険は、認知症と診断された後に

事前登録をした方なら入ることができ、保険料は神戸市が負担してくれます。

また、給付金は特に事前登録をしなくても、加害者の方が市外の人であったり、

賠償責任がなくても給付されます。

事故被害に合われたご家族にとってとても心強いものになるであろうこの制度は、

来春の運用開始を目指して検討されているようです。

新しい制度の運用にはそのための体制づくりや運用費はどうするかなど、

多くの人の協力や様々な準備が必要ですが、

滞りなく制度が開始されることを願うばかりです。

今までは認知症関連のトラブルがあっても、

ご家族やその関係者の方のみで対応するなど、

一市民レベルでなんとかするという状況でした。

しかし、高齢者が増加するに連れ、不慮の事故やその他、

一市民では対応しきれないケースが増えています。

今回の給付金支給の動きは、神戸市が以上のことを行政として

無視できないことであると認識した現れであり、

社会が認知症と向き合う準備を始めていることを感じています。

他の自治体でも同様の動きが進むと見られていますので、

私たちも医療を預かる者として注視していきたいと思います。

24日 2018年 09月

MRIの注意点が意外な問題に発展

北村クリニックにもMRIの検査設備があります。

ご存知の方も多いと思いますが、

MRIは強い磁力によって脳の中などを検査するものです。

この磁力は一般の方が想像しているようなレベルではなく、

刺青をしている人はその刺青の染料に含まれている

金属成分が引っ張られてしまうほど強力です。

MRIがある部屋にカメラを持って入った人が、

その強い磁力によってカメラの中に保存されている

社員データが消えてしまったということもありました。

この「磁力」について、ある有名な大学教授が

「磁気によって凝りをほぐす」という製品に対して

インチキだと指摘したのです。

この教授が指摘しているのは、

「磁気で血流が良くなるなどということはない。

だから磁気で凝りがほぐれるというのは根拠がない」という主旨です。

さらにこの教授は「もしそれが本当ならMRIの検査で

全身の血液が引っ張られて死亡事故になる」とも続けています。

この指摘は、MRI検査を行っている私の立場から見ても面白いと思います。

MRI検査ではわずかな金属質のものであっても持ち込み禁止なので、

検査機器に入る方はMRIからの磁力による影響を全く受けません。

つまり、血流が磁力によって促進されることもありません。

ゆえに、磁力によって血流が影響を受けて凝りが

ほぐれるというのは、確かに根拠がないかも知れません。

この教授の言うように、微弱な磁力で血流が良くなるのであれば、

MRI検査機器に入った人は全身の血液が沸騰するほどの影響を受けるでしょう。

これまであまりにも当たり前だと思われていたことが、

こうした指摘によって「考えてみればそうだ」となるというのは、

まだまだこの世の中にはたくさんあるのでしょう。

何事も常識だからと思い込んでしまうことなく、

常に理由や根拠を求めるのが医療人として大切なことだと改めて思った騒動でした。

12日 2018年 09月

格闘技の「ダウン」は脳が起こす現象

ボクシングや柔道などの格闘技で、選手がダウンすることがあります。

特にボクシングはダウンを奪うことを目的としたスポーツなので、

ダウンをして10秒立ち上がることができなければ

その場で勝負が決まりますし、

判定においてもダウンを奪ったことが加算されます。

このダウンというのは、

自分が経験していなければ不思議に映るのではないでしょうか。

あんなにフラフラになって、

10秒も立ち上がれないことがあるのか、というわけです。

このダウンという現象は、脳が引き起こしています。

脳震盪(脳しんとう)という言葉をお聞きになったことが

ある方は多いと思いますが、

脳が激しく揺さぶられたりすると神経が切断され、

フラフラになったり立ち上がれなくなったりします。

自分では意識があって立ち上がろうと思っているのに、

神経回路がつながっていないことで力が入らず、

意図しない方向に倒れてしまったりするのです。

脳震盪は一時的な現象なので、

時間が経てばちゃんと立てるようになりますし、

フラフラした状態も元に戻ります。

しかし、これを何度も経験するのは脳神経外科医として

決して良いことだとは思いません。

脳震盪によるダメージは完全に消えるわけではなく、

修復をしても積もり積もったダメージがやがて悪影響を及ぼすからです。

代表的なものに、ボクサーの「パンチドランカー」があります。

何度も殴られることによって脳震盪を繰り返すと、

やがて修復できないダメージが残ってしまいます。

しかもプロのボクサーが繰り出す破壊力の大きなパンチを頭に受けるため、

それが傷となって残ることは想像に難くないでしょう。

そのためにボクサーは練習の時に分厚いヘッドギアをつけています。

これはもちろん、練習で繰り返し顔や頭にパンチを

受けるため脳震盪にならないように頭を守るためです。

他のスポーツでも然りですが、こうした保護具を

ちゃんとつけることはその後の競技者人生だけでなく、

人としての人生にも大きな影響を及ぼすことを認識していただきたいと思います。

06日 2018年 09月

脳卒中・循環器病対策基本法成立への運動

日本脳ドック学会では、「脳卒中・循環器病対策基本法」

という法律の成立を目指した運動を行っています。

脳卒中を発症する人やそれによって亡くなってしまう人が依然としてとても多く、

国として抜本的な対策を講じるべきであるという考えから、

脳ドック学会が本腰を入れて成立に向けた活動を行っています。

この法律ができる何が変わるのかと言いますと、

最も大切なポイントは「啓発」だと思います。

私たち専門医は脳卒中について常に研究している側なので、

最新情報についてもアンテナを張っていますが、

一般の方が同じであるとは限りません。

脳卒中という病名を見ても、どういう病気なのか

よくわからないという方も多いのではないでしょうか。

「脳卒中」という名前の病気があるわけではなく、

脳梗塞やくも膜下出血など脳の病気を総称したものであり、

どれも命に関わる可能性が高い病気であることから

「脳卒中は怖い」というイメージは浸透していると思います。

そこでこの対策基本法の骨子には、「市民啓発」が盛り込まれています。

義務教育の中に脳卒中に関する知識を含めて、

単に「脳卒中は怖い」というイメージだけを伝えるのではなく、

どんな病気なのかという本質や予防法を伝えるという具合です。

それもうひとつ重要なのが、治療の初動態勢です。

脳の病気は時間との戦いなので、いかに早く

治療できるかによって予後が大きく変わります。

早期に治療できていれば救えた命、残らなかった後遺症も多々あるので、

治療態勢を確立することで、治療の質を高めることにつながればと思います。

どれも予算が必要なことであり、

お金だけでなく人的な資源も必要になるでしょう。

それを現状の「現場の努力」だけに依存するのは無理があるので、

法律を作って国として本気で脳卒中対策をするべきであるというわけです。

私もこの主旨に賛同しています。やはり医療は現場の努力だけでなく、

社会全体でそれを支援する仕組みが必要だと思うからです。

その意味でも、脳卒中・循環器病対策基本法の早期成立を願ってやみません。

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